
赤は木の実。
茱萸の実、桜の実、南天の実。
青々としげる木陰にひっそり熟れているのがいい。
黒すぐりをほおばって食べるこどものくちびるが薄紅に濡れたの。
光に透かし見る柘榴。
雪を含んだ紅梅。
修二会の椿。
春日大社の巫女の袴。
月夜の鳥居。
WrittenBy:
櫻井香萌
大人になるとどうしてだか悲しいことが多いね、と私が言った。
違うよ、増えたんじゃなくて子どもの頃は見えなかったただけだよ、と主人が言った。
ずっとまえからひっそりと、けれど確実にいつも傍にあったんだよ、と。
別れはいつも突然に。それも本当にあっけない訪れで。
「人が死ぬのはいつだと思う?人に忘れられたときさ」とある漫画のおじいさんが言った。あっけない別れは記憶をどんどん美化させて。うっすらぼやけたもやのなかに見える景色はリアルさに欠けて。曖昧な記憶は自分自身さえ曖昧な存在にしてしまうようで、今まで踏み固めてきたはずの足場ががらがらと崩れて「私」が埋れていくような錯覚に陥る。
どこかの歌の歌詞ではないけれど「さよならの意味を知らない」私たちが本当の別れに気づくのはいつなのだろう。願わくばこの子がそれに気づくのはずっとずっと先でありますようにとわが子をぎゅっと抱きしめて祈るのでありました。
WrittenBy:
野出侑良