10/14:ものづくりすと

隊長が大幅に料理を担当するようになった。しかも、下ごしらえが丁寧でおいしい。
高校時代の愛読書が『食物成分分類表』で、「家庭科の男」と呼ばれていた彼。
一方わたしは掃除洗濯は大好きだけど、料理は極力したくない派。
お菓子作りも専業主婦時代にしてみたけど、大量の砂糖とバターを使うことに気づいてやめてしまった。そこで、「ではからだにいいお菓子を作ろう」と思うとまめすずさんになるのだけど、わたしはお菓子をやめて煙草を吸うという善悪の彼岸をも超越した永劫輪廻の道を選んだ。
先日、友人Aの出産祝いに友人Bと連れ合ってうかがった際、わたしのお祝いが現金と百貨店のオサレ菓子と他、というあっさり系に比べ、友人Bはスタイを6枚(しかもリバーシブル)と、ガラガラ(オーガニックコットン使用)を2個手作りしてきた。迎える友人Aもわたしたちを手作りケーキでもてなしてくれた上に、帰り際には手作りトリュフを持たせてくれるという心遣い!なんなんこの手作りの会!そして真夏の直射日光に晒された毛穴のように、容赦なくガッツリと浮きまくる非・ものづくりすとなわたしの存在!
夫を「主人」と呼び、甲斐甲斐しく「手作りすと」の道を歩む友人Aに驚愕驚愕。ちくちくとスタイを手作りした匠魂溢れる友人Bを畏怖畏怖。
わたしはかつて研究に追われていたとき、とれたぼたんを付けるのも面倒で接着剤で着かないかトライして、服をダメにし、友から白眼視された女であるからして、ある種の感動のようなものを彼女たちに覚えたことは、贅言を要しない。


いま、とあるパーティを企画してるのだけど、低予算の手作りパーティにため、
「なにか作れるやつはいねがー」と青森のなまはげのように「作れる」友を探していたら、いるわいるわ「ものづくりすと」たち。特に小物系に関してはデザインや素材までいろいろ好みを聞いてくれるのだけど、もはや彼女たちの提案がわたしの思考の域を超えていて、お任せするのが最善と判断(思考放棄ではない)。隊長までもがかつての家庭科魂を再燃させ、「型紙があれば衣装縫えるかも」と武者奮いを起こすが、そんな情熱いらんから修士論文書いてください。


ecritにリンクを張っている作家さんたちも思えば多種多様な「ものづくりすと」たち。ものを創れるってほんとうにすごいと、なんにも創れないわたしはほんとうに尊敬の念を抱きます。
WrittenBy: 櫻井香萌

10/08:ユメノナカデ

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10ケ月前夢の中でたずねたカフェがあった。
北海道にあるような大きな木造の倉庫で、
1階がアンティーク家具屋、2階がカフェ。
ちょっと雰囲気が一乗寺の葡萄ハウス家具工房に似てるような感じ。
時は真冬。道に迷ったわたしは、
暖かな灯りがこぼれるお店に吸い込まれるように入ってゆき
ストーブの傍らのスウェーデン製の安楽椅子に腰掛けて
大きなブランケットにくるまって
ホットワインで冷えたからだを温めながら
ムーミンの本を読むという夢を見た。
今日は、北ならまちと呼ばれる界隈、
奈良女子大学の正門ななめ向かいにある
古びたなぞの神社の前を歩いているとき、
ふと見ると
奈良女子大の正門前の通りの向こうに
かつて夢の中で迷い込んだ木造のカフェが
10ケ月前と変わらない様子でオープンしているのが見えた。
わたしはふらふらとそのまま歩いていって、
「10ケ月ぶりなんです」
「10ケ月ぶりですよね」
と話ながら、同じホットワインをオーダーして、
またムーミンの本を読むという
そんな音のない静かな夢を見た。
夢の中にも地図があるみたいで、町のつくりも詳細だった。
夢から醒めたわたしは、
しばらく自分の置かれている状況がわからなくて、
ホットワインに添えられた枝つきのレーズンとミモレットが
とってもおいしかったなんてぼんやり思い出していた。
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WrittenBy: 櫻井香萌

09/15:ひまつぶし展

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 ずっとずっと、信じていたコトバ…だったのに。
「ひつまぶし展いくよ!」とはまだそらにメールしたら、「ひまつぶし展だよ」と…。
あああああ。名古屋に行くと「ひつまぶし」を「ひまつぶし」と読んでしまうのに。
なんの話をしているのかよくわかりませんが、一事が万事、間抜けなのです。
めっちゃ元気に・まっすぐに・ピュアに・間違えて認識してました。
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 クリエイターの友人・はまだそらと、その友人・大葉もみじさんの二人展「ひまつぶし展」を見に、隊長とふたりかもがわカフェにいってきました。今まで何度もはまだの個展に足を運びましたが、今回のがいちばんよかった。謎の経歴を持つ秀才・もみじさんともご挨拶させていただき、ノートにコメントをカキカキ。「ロデオ」を描いたはまだの作品を「馬頭観音に見える…」と伏し拝む隊長。ふたりでいちばん気に入ったのがこの絵。タイトルは「ノック」。
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 あとからハマダと話していて、わたしも隊長もともに10月生まれなので、記念にということで1枚オーダーで描いて貰うことにしました。サクライ家版にアレンジした「ノック」をたのしみにしてるよー。ちいさな部屋に飾ってたいせつにします。
ケンカしたときにこれを見たら仲直りできそう。
「いい夫婦になるのだ」と「ノック」を前につぶやく隊長。ほんまやねえ。
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 というのも、実ははまだはわたしたちの恋のキューピッドなのです。
2008年春、わたしへの片思いをぼおっと抱いていた隊長の背中をはまだが押し、そしておつきあいがはじまりました。はまだ、ほんまにありがとう☆
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 コーヒーを飲みながら過去のバカ話に花を咲かせ、秋の夜長をたのしみました。死体のスライドばかり見せられる「法医学」の講義を抜け出し、宇治に遊びに行ったこと。宇治川のほとりで一晩飲み明かしたこと。伏見桃山から嵐山まで歩いたこと。居酒屋から帰ると鞄に店のフライパンを入れて持って帰ってきてたこと。大瓶ビール半額フェアの居酒屋で、初日に6人で108本飲み、フェアの期間を縮めたことetc。学部生時代は食べる間を惜しんで勉強していたという軽い変態の隊長にとって、わたしとはまだの学生生活はムダとアホの塊に映った模様。学部生時代、大学なんか1年に10日ぐらいしかいかなかった。あの成績から4年半で卒業して「深草の奇跡」と言われたけれど、たのしかったなあ。
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 来年、はまだとわたしでふたり展やります!ということで、いろいろとたくらんで暮れていったかもがわカフェナイツ。もみじさん、またお会いしましょう!
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ガトーショコラとコーヒー。読書は『貧乏サヴァラン』でした。
ちなみにはまだへ。昨夜の案件ですが、何百回と唄いし我らが「逍遙の歌」、
こちら
からどうぞ。
WrittenBy: 櫻井香萌

09/08:ならがすき

 奈良生まれ、奈良育ちのわたしが京都で暮らし始めたのは18歳の時。JRが1時間に1本しかない町から大学に通うことはできなかったからだった。以後、奈良で過ごしたのとほぼ同じ時間を京都で過ごしている。日々に高まる、しずかな奈良への思い。
 わたしが幼い頃は、父が無職で母が大学講師だった。わたしの子守のために、父はよく東大寺に連れて来てくれたけど、大仏が怖くていつも泣きじゃくっていた。動物が怖かったので奈良公園も恐怖の苑だった記憶がある。
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 奈良への愛の始まりは古代史。小学生の頃から古代史フェチで、古墳の発掘現場に出会うと、金網にへばりついていつまでも見ていた。韓国語で「ナラ(クンナラ)」は「国」を意味するが、扶余を訪れた時にその山野の風景があまりにも明日香に似ているのに驚いた。国は、明日香であり、奈良なのだと思った。
 母方は平家の落人が祖だと聞くが、奈良、和歌山にはそんなお家がたんとあるので、いくら元士族で過去帳が古くとも、あまり信憑性がない。一方、父方は4代前しか遡れない百姓だけど、なぜか祖は渡来系であるという根拠のない伝承があり、扶余の野原に立ったわたしは、その深紅のレッドの嘘っぱち神話を強く信じたくなった。
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 高校生になると、ひとりで寺巡りをし、正倉院展を観て、三月堂に籠もった。泣きたいほどに奈良が好きなのは、泣きたくなった時にいつも奈良を訪れていた頃の習い性なのだろう。当時の三月堂は床が石畳で風情があった。今にも手を触れられそうに生々とした躍動感、息を吹いて邪気を踏みしだきそうな憤怒の形相、静と無を体現する塑像の線の流麗に艶めかしいこと。美しいということは、どう美しいかが説明できないことなのだと奈良の仏像を見て思った。奈良に比べれば、京都の寺院は自己演出的に荘厳で、仏はどこか他人の空似である。
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 元興寺とならまちの嫋々とした風情と力強い生命力の背反性、二月堂の回廊から見る奈良市内の優美、修二会の光と闇の聖の世界、三月堂の生き生きとした静寂、春日大社とささやきの小径のまろらかな時間、薬師寺の凍れる音楽、悠揚とした斑鳩の夕暮れ、中宮寺の弥勒の静美、周囲の町並みにとけ込んだ法華寺、神韻瀟々とした三輪大社、万朶に咲き誇る吉野の桜、曼珠沙華の鮮やかな晩秋の明日香、その中に5世紀から生き続ける石像、いまなお生きる万葉の世界、祈りの室生寺、こもりくの長谷寺。わけても愛してやまないのが明け暮れの飛火野、仏の御国の浄瑠璃寺、苔の美しい秋篠寺。業平伝承の残る不退寺。山辺の道と夢の跡なる山田寺跡。
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 周囲の誰からも理解されず、自分を愛することもできなくて、憎みながら逃げ出した奈良だったのに(奈良といっても奈良市ではなく、十津川に近い南部)、いまは日に日に奈良への愛着が胸の中で密度を増してゆく。
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 隊長も吉野の育ち。今後奈良で暮らしたいと提案すると、京都生活2年目の隊長は「南は宇治まで」とすげない。仕事の都合上仕方がないけど、ならばせめてこまめに奈良を訪れ、わたしの中でその美を結晶させ、奈良にまつわる文学を綴っていきたい。そういうやり方が、わたしの奈良の愛し方。わたしが自分自身を知り、語るひとつの方法。
いまは毎日奈良で暮らすことを夢想しながら、京都での日々を闘っている。
WrittenBy: 櫻井香萌

08/31:すこしずつ―Djangoについて

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 ecritには何度か紹介し、短編「あるかなきかの」にもお名前をお借りした奈良のセレクトレコードショップ、Djangoについて、お伝えしたいことがあります。実は、店長の松田太郎さんから、経営が大変苦しく、閉店やむを得ずという窮状にある、と先日メールでお教えいただきました。奈良はHMVが閉店するなど、巨大資本でさえ苦しい音楽業界だそうですが(どの業界もおなじことかも知れませんが)、Djangoさんは20年の歴史の中で、お店を一度閉店しながらもまた再起し、今日に至られました。
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 ジャック・デュミの映画「ロシュフォールの恋人たち」に登場するカフェを模したお店にこめられた音楽への想いに、胸を打たれた方も多いのではないでしょうか。取引先の状況や細かいことはわたしの口から申し上げることはできませんが、フランチャイズが跋扈し、どこの地方都市も同じような顔をしているのを見ても、地域の小規模個人経営店を消費者(愛好者)で守らなければならないとわたしは思います。
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 Djangoのあるちいさな通りは通称Django通りと呼ばれるほど地域に根付いており、また名物店でもあります。もし、この記事を読んで下さった方が、Djangoさんのお店にお運びくださり、せめて12月まで、そして月に1枚ずつでもCDをお求めくだされば、なんとか現在の窮状を好転すさせることができるのではないかと思います。
 ほんのちいさなことですが、ちいさなことが積もり積もれば、ひとつの文化を守ることにもつながります。賛否両論あるかもしれませんが、現在古本屋に本を売り、質屋にブランド品を売る極貧生活者・櫻井も、及ばずながら月に2枚のCD購入をし、なんとかDjangoさんの経営が上向きになりますよう、念じながらお手伝いしたいと存じます。

 奈良を愛する方、Djangoを愛する方、またはこの記事を読んで下さった方で、もしお気持ちがあれば、Djangoにお運びいただくか、もしくはDjango Blogからお好みのCDを取り寄せ、予約などで購入していただければうれしいです。どのようなCDでも取り寄せ、通販可能です。ブログに紹介されていないCDでも、他店で購入するならぜひDjangoで!どうぞせめて、年末まででもごひいきに。
なにとぞよろしくおねがいいたします。
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Django 奈良市餅飯殿町36
14時~20時半 木曜定休
TEL 0742-22-3249
 
WrittenBy: 櫻井香萌
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