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[夏の終わり-1-]
わたしが生まれた31年前のこの日に、悟は地球のどこかで31歳の誕生日を迎えていた。誰とどこで、どんな一日を過ごしたかは知らない。いつか聞い...
[夏の終わり-2-]
なら町に流れる時間は、昨日も今日も、同じ緩やかさで静かに深く流れている。元興寺を中心に発展したなら町は、第二次大戦の戦禍を免れたために...
[夏の終わり-3-]
奈良に降り立つとそのまま「古書喫茶ちちろ」に向かった。「ちちろ」は奈良県庁の裏手の古い町並みの中に紛れるようにして立っている。店は普通...
[夏の終わり-4-]
「ひとりでどこにでも行けるような女が好きだ」と、ふたりで訪れた居酒屋「蔵」で悟は言った。「ひとり分の珈琲を立てて、じっくりと時間をかけて...
[夏の終わり-5-]
こうして、緩やかな奈良での生活も6年目を迎えた。悟は69歳になり、わたしは38歳になった。わたしたちのつき合い方は6年前と同じまま、ひとつ...

